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旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

旧い映画を楽しむ。なでしこの棲家

<プレステージ>


        ≪プレ.ステージ≫

何故?そんなに人生を急ぐの?といいたくなるほど、
ピエール(ドロン)は、秒単位で働く。

平凡な人生を嫌ってか、骨董品、美術品を買いあさり、
売りさばき、また、値打ちモノを買いあさる。
そんな生活にスリルを求めて死に急いでしまった男の物語である。

同棲中のミレーユダルクを相手役に全編、走りまくり、
観ているほうが息切れしそうになるほど動き回る。

プロデユースもドロン自身で彼の、実生活での
美術コレクションも有名であるように、
美術品への造詣の深さが最も顕れている作品でもある。


ストーリー

エドヴイジュ(ミレーユ.ダルク)の危篤の父から買い取った
田舎の邸..
それはアンテイークな邸で広い庭を持つ。
庭の隅からは遺跡が発掘されるほどである。

エドヴイジュはピエールから邸を取り戻そうとするが
引き下がる彼ではない。

エドヴイジュと結婚する事と邸を新居にするということで、
ついに邸を手に入れた。

由緒ある絵画,彫刻などを、扱う美術商を仕事としている。
オークションで売る,買うといった駆け引きに情熱を燃やし、
生きがいとしている。
しかし、そのやり方がなんとも性急で秘書のプラシードも
いつも振り回されているが、ピエールの良き理解者でもあり、
頭も切れる。いろんなアクシデントもふたりで乗り切っている。

商売敵のフリーマンとも常に競りあっている。

俺には時間が無い、時間が無いというピエールは
自分では気付いていないが、本能的に
自分の寿命を知っているかのように買い急ぎ、売り急ぐ。

何を求めて、買い、売るのか・・・・
求めれば次の夢を買う。

いろんな策略に引っかかりながらも、
エドヴイジュと結婚生活は巴里のマンションで始まったが、
マンションの改装さえもエドヴイジュに相談もなく
一人で取り仕切る。
食事をしていても、ゆっくりと味わう事は無く、
彼の頭の中はすべて、ビジネス、ビジネスしかない。
それも分刻みで、電話,電話の毎日。

妊娠したエドヴイジュに赤ん坊さえ7ケ月で産めと言う。
さすがに怒ったエドヴイジュは
他所で赤ん坊を産むと出て行ってしまった。

そんな彼をエドヴイジュは理解していながら、
そんな彼を愛しているとわかっていながら
ついていくのがしんどい。

そんな折り、彼が20年来求めていた,夢に見ていた
  ”エトルリアの壷”がオークションに出品される事になる。
紀元6世紀だかに作られた壷だそうだ。

どうしても手に入れたい彼は全財産を投げ出してまで
手に入れようとプリシードの心配を他所に手段を
画策し始める。

”壷”は、フリーマンの他に
博物館なども狙っていて、
ピエールの用意できるお金には程遠い値がつくと考えられる。

競売ならフリーマンの倍は出すと出品者に伝えようと
ニューヨークへ発つ出品者を追って空港へ急ぐピエール。
離陸したというのに飛行場を駈けるピエールは
発作を起こして倒れた。
入院しないと命を縮めると医者に言われながらもピエールは
耳を貸さない。

エドヴイジュの妹マリーを尾行し
心筋梗塞なんだぞと、問い詰めたマリーから
エドヴイジュの居場所と彼女が男の子を出産した事を
聞きだした。

エドヴイジュに会いに出かけたが、なぜか彼は
扉を開けるのをためらった。
エドヴイジュはマリーに彼の変わりに抱きしめてと言う。
夢を追う彼を愛しているエドヴイジュはにっこり笑って…

このシーンはミレーユにドロンとの子が授からなかった彼女が
彼の子を産んだと言う安らぎをこの映画で味わったような
気がして良いシーンだ。柔らかな彼女の母性を感じる
笑顔が素敵です。

さて、
それほどまでにして”壷”を手にしてどうする?
明日にはもう興味も薄れるんだろというプリシードの
言葉にも”そうだ”と応えるピエール。
手に入れるまでのスリルこそピエールの生きがいだからだった。

ピエールはオークションの会場には
アルバイトの美術学生らしき人物を使って、出席させ、
会場の隅からプレシードがオークションの模様を逐一、電話で
ピエールに報告し、指示を受けて合図をするという方法で、
やっと落札。
プレシードが電話口で報告するも返事が無い。

ピエールの目はすでに一点を見つめていた。

駆け寄ったマリーが見たのは心臓発作で息の止まった
ピエールだった。

アラン独特の死に顔ですね。
冒険者やビッグガン、ポーカーフエイスで見せた
目を開けたままの、独特な死に様ですね。

”ピエール、ピエール”と叫ぶプレシードに
”ニオックス氏は亡くなりました”という医師の言葉だった。

夢を求めて求めて急ぎ人生を駆け抜けたピエール。
命をかけてオークションという夢に走った男。
大仰なアクションを除けば
ここにも実生活アランの姿が垣間見えましたね。
目的のためにただひたすら駈ける男。

映画人生へのドン欲さも他の俳優達とはひとつ違ったところに
位置するアラン。

映画作りへの夢は彼のいろんな作品から窺い知れます。

ビデオを贈ってくださったCさんも人間アランのフアンで
あらせられまして、そうおっしゃっています。

頂いた作品の中に
テレビ版の〔アランドロンのシネマ100選〕があります。
この作品からも覗えるように、
単なる案内役ではなく、
映画の研究、映画への情熱といったものはいち俳優にとどまらず、
映画の未来というものを一生懸命に考えて
後に繋ぐ事を真剣に考えているということが伝わってきます。

映画のデイテイールやフランス人気質が彼の作品に
きちんと顕れ、
フランス暗黒街のマナーといったものが
フイルムノワール作品にも
折り目正しく描かれるのはハリウッドではあり得ない姿勢で
研究すればするほど彼の映画への思い入れが
伝わってきます。

ハリウッドのアクションものを観ていると
アランのアクションモノの頭の良さと、
ずっこけかたもフランス的なハイカラさがあって
その違いが良くわかり、
フランス映画フアンにとってはたまらない。


アランの魅力もさることながら、作品を見渡したときに、
彼の頭脳のアンテナがいかにすごいものかがわかりますね。
プロデユースを手がけると言う事は、
建築家と一緒で大局的にモノが見えなければならないし、
また、あらゆる知識が要求されます。

ガン(銃)など小道具の選択、インテリアという美術方面、
シナリオ、ありとあらゆる方面に口出すわけだから、
それ相当の知識が要求される。

1967年あたりから、彼独特の作品が作り出されるわけですが、
デビューから10年間にどれだけの勉強をしてきたか?
映画と言うもの、フランス国というものの研究をしてきたか?
ヨーロッパという大陸の研究。
旧きフランス映画や名優たちの研究,
それが1967年以降の彼の作品へと投影され、
人間アランと重なった実像映画とも言って良い作品へと
繋がったのだと思います。
観れば観るほどに奥の深いアラン作品群であります。


  1978年度作
製作 アラン・ドロンとレイモン・ダノン、
監督 エドゥアール・モリナロ、
脚本 モーリス・レイムとクリストファー・フランク、
撮影 ジャン・シャルヴァン、
音楽 カルロ・ルスティケリが各々担当。
出演 アラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、モニカ・ゲリトーレ、
   ミシェル・デュショソワ



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